- 作者: 新美南吉,黒井健
- 出版社/メーカー: 偕成社
- 発売日: 1986/10/01
- メディア: ハードカバー
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ごんは、兵十という村の若者が、病気のおっかさんのためにせっせと獲っているとも知らずに、兵十が目を離した隙に、せっかく「びく」にいっぱいたまった魚を面白半分に沼の中に戻すいたずらをするわけです。最後にうなぎもどぼんと水に入れようとするんだけど、ぬらぬらして手こずってるうちに兵十に見つかる、あわててうなぎを首に巻いたまま逃げる、なんとか逃げおおせて自分の巣穴の前で、首に巻きついたままの「うなぎの頭をかみくだき」草の上に置く、と、そういう場面です。興味深いのは、原文では頭を噛み砕くの描写はないのだそうです。「赤い鳥」掲載のために加筆修正した鈴木三重吉によって加えられていた部分のようです。あの部分によって、「ああ、そうだ、ごんは狐だもんね」と一歩引いて冷静に読めるというか(笑)・・・そんなことないですか??
ごんはいたずらが好きで、村の様子をいろいろわかっていたり、ひとりであれこれ考えをめぐらせていたり、人間の子供みたいに思えてくるんですが、うなぎの頭をためらいなく噛み砕くあたり、やっぱり野生のたくましい獣の子だよ・・・とちょっと寂しくなるというかなんというか(笑)、あの一文でごんへのいろいろな思いを感じることができるような気がするのでした。原文にその一文がないとすると、原文の「ごん」は、「赤い鳥」版のごんよりも野性味が少なくておとなしい、線の細い子狐みたいな気がしてきますが・・・(笑)。学校でみっちりと時間をかけて習った親しみのある文章だからか、野性味あふれるいたずら子狐の「ごん」も私は好きかもしれない・・・と、改めて思いました(笑)。どっちにしても哀切きわまるやるせない物語ではあるんですが・・。
教科書に載ってた切ないお話というと「ないたあかおに」がありますね。これは私は今読むと泣いてしまいます。赤鬼より先に私が泣きます(笑)。