二銭銅貨

というわけで、江戸川乱歩の傑作選の第一に収められてある「二銭銅貨」を読んでみました。私の勝手なイメージは・・・「ハンチングを被り、ツィードのベストを着たようなワケありな青年が、ワケありな二銭銅貨を握り締めて夜の街をひた走る、青年はワケありの二銭銅貨を持っているがために何者かに追われているのであった」でした(笑)。なんだ、その陳腐な設定は、と思われそうですが、なんとなくうすぼんやりとそのようなストーリーを思い描いていましたが、読んでみたらぜんぜん違ってて(笑 あたりまえです)ちょっと昔の日本に生きる若者の日常のひとコマではありませんか。いや、日常のひとコマなどと済ませるわけにはいかないひとコマですが(笑)。
日々の食事にも事欠くほど窮乏しているにもかかわらず、ちょっとした遊び心というかなんというかで、ルームメイトと知恵比べ、そのためには全財産の半分を投資してしまうのも厭わない、そこまでして仕掛けた「いたずら」によって、知恵比べには勝利したものの、友情は大丈夫か?!これからもルームシェアは成り立つのか?貴重な生活費もあんなことに使われてしまっていいのか??と思わないでもないけど〜・・・。ま、いいんだろうな(笑)。ラストは鮮やかなどんでん返しがスパッと決まるわけですが、それによってだからといってふたりの若者の生活(貧窮状態)はなんら変化することもなく続いていくのでしょうね、というあたりが妙にリアルです。巧妙ないたずらを仕掛け仕掛けられの、そして驚くべきひらめきで謎解きをし、さらにそれを悪魔的にひっくり返してみせるという別次元から、一気に引き戻される感じが、なんだか滑稽でもあり、ちょっと不気味かも(笑)。
最後は読者に対しての申し開きみたいな、妙に気になる含蓄のある一文があります。本筋には直接関係がないということはわかってはいても、なんだか重大な鍵を知らされないままに話しを終わられてしまうような引っ掛かりを残す、っていうかな〜・・・。二銭銅貨の入手先をばらされるとマズイというのは、誰にとってのどういう関係の人物なら妥当だろう??などと読んだ後に自由に(勝手に)思い巡らすことができるわけですよね。さて、どんな人物を想定しましょうかね??(笑)