読んでみた

瓶詰の地獄 (角川文庫)

瓶詰の地獄 (角川文庫)

ドグラ・マグラ」という本の存在を知ってから、気になりながらも「奇書」と名高い本でもあることから、ずっと作者・夢野久作のことは避けてました。ところが最近、あるきっかけで、避けていたはずの(笑)、夢野久作の「少女地獄」「瓶詰地獄」の「地獄」2冊を買ってしまいました。いったん意識してしまうと、避けてたつもりでもなぜかじわじわと出会ってしまうってことですか??まあ、いいんですが・・・。で、平行して読んでいるわけです。
文体がまず特徴的で、カタカナを多用しています。書かれた時代を思えばそれほど不自然な使い方ではないのかもしれないけど、現代の表記に慣れた者からすると、カタカナというのはどうしても「軽み」を感じさせられますね。くだけた感じというか。「チットモかまわない」とか「ホントウの悪魔」とか。そういう軽い文体で深刻な内容が書かれてあると無気味さが増してくる気がします。
「瓶詰」は、いろいろな読み方や解釈ができそうな、短いのにとても広がりのある小説です。幼い兄妹が無人島に漂着して大人になって、「とうとう」ある時、救助の船が来た、という描写があります。「ついに」でもなく「やっと」でもなく「とうとう」です。待ち遠しいはずの救助の船なんですが、ある時から兄妹にとっては禁忌を犯したその瞬間に出現する、裁きの象徴みたいなものだったんだろうなと思います。でも、救助の船がほんとうに来たと読めば、それはそれで哀切極まりなく、来ていない、惑乱の中の幻覚だと読めば底なしのような狂気を感じさせられます。
・・・こうしてだんだんに夢野ワールドに慣れ親しんでおいてそのうちいつか「ドグラ」へ突っ込んでいくわけでしょうか。ま、そのうちね、そのうち(笑)