ベニスに死す

ベニスに死す [DVD]

ベニスに死す [DVD]

夏によく合う、とても好きな映画のひとつです。全編にわたってマーラーの曲が流れ、セリフはほとんどないです。
ストーリーは、初老の有名な作曲家がベニスに静養に出かけて、同じホテルに滞在していたある家族の中の美貌の少年に心奪われるわけです。心奪われるんですが、遠くからひたすら姿を見つめるだけです。少年は、というと妙なおじさんがいつも自分に熱っぽい視線を送ってよこしてるな・・・と気づくんですが、まあ、だからといって少年の方はなんてことないわけですね。大作曲家は、まるで純情な少年か乙女みたいにその少年の美しさに恋焦がれるんですが、当の少年・タジオはわざとその気持ちをからかうようなそぶりもわずかに見せたりします。タジオも品のいいぼっちゃんなので、それはほんのわずかなそぶりなんだけど、初老の大作曲家はものすごく傷ついて、一旦はホテルを引き払うものの、でもまた戻ってくるんですね〜。そのころベニスではコレラが大流行で(映画の中でね)わざわざそんな場所に舞い戻るあたり、もうなにか吹っ切れすぎ、みたいな状態になってるんですが、最後は若さへの渇望と憧れに執着したまま静かに悲惨に終わるんです。若さに固執する様が滑稽にすらうつりますが、ちょっとぞっとさせられるものもあります。
で、恋焦がれられる少年・タジオ役のビョルン・アンドルセンという少年はほんとに彫刻的な美しさです。もっと言えば、人間的な雰囲気があまりないかも。この少年が初老の作曲家を結果的には追い詰めてしまうんですが、ほんとにすごい存在感で・・・こりゃ振り回されるよね、無理もないわ・・・と見るたび納得して初老の紳士に同情してしまいます・・。