映画の「告白」

告白 (双葉文庫) (双葉文庫 み 21-1)

告白 (双葉文庫) (双葉文庫 み 21-1)

映画「告白」を見てきました。
原作は芥川龍之介の「藪の中」的な手法で、登場人物がそれぞれの立場からそれぞれに語ることでストーリーが進んでいきます。「藪の中」は、結局とうとう真実ははっきりすることなく、わけわからないまま「藪の中」なんですが、この小説はちゃんと一応ある出来事についてじりじりと読者を導いてくれます。その点が、手法が同じでも「藪の中」とは大きな違いかも。この小説も、語る人によって、もっと勝手ではちゃめちゃでもよかったかも、なんて思いましたが・・・。
で、とにかく映画を見ましたが、原作の中の教師・森口は、自分の感情を出すことなく、無気味なほどクール(とも実はちょっと違う気がしますが)で淡々としてます。最後まで大変淡々としてます。行間からも、復讐するにあたっての森口先生の葛藤などは感じられず、とにかくひたすら無表情に淡々と自分のやるべきこと(まあ、「復讐」ですね)をこなす、というような像が浮かんでくるだけでした。それは読み手の感情移入をも突き放すほどの情緒の欠如ぶりで、でもそれがリアリティを排除して小説として読める「救い」だったのかもしれません。でも、映画の先生は感情を時々出してくるんですね。それによって(人間的な感情が見えることで)「救い」としたのかもしれませんが・・・。原作はだいぶ評価割れてるみたいですが、映画はまあまあ評価がいいみたいですね。あの「人間性が垣間見えることでの救い」による高評価ってことなのかな〜・・・。