虚無への供物

新装版 虚無への供物(上) (講談社文庫)

新装版 虚無への供物(上) (講談社文庫)

日本三大奇書、っていうことで、「ドグラマグラ」「黒死館殺人事件」を読んだので、もう1冊のこの「虚無への供物」を読み始めています。今は上巻の半分を過ぎたあたりです。今のところわかっているのは、ある人物が殺されました、密室殺人事件のようでもあるけど、持病の心臓麻痺が原因では、ということで疑惑の死体は埋葬されてしまう。いや、病死ではない、これは密室殺人事件ではないのか??みんな、どう思う?ということで、「みんな」っていうのはその死に疑惑を持つミステリー好きの登場人物ですが、それぞれが持論を展開していきます。「私はこう思うわ。なぜかというとこういうわけよ。」みたいな、わりあい軽妙というか軽快な調子で自分の「確かな推理」を語っていくわけです。私が今読んでいる部分はまさにそこで、これほど密室殺人事件のノウハウがあるなら、「ネタ」を小出しにして密室殺人事件シリーズの小説がいっぱい書けてしまうだろうに・・・などとつい思うのでした(笑)。ま、それはともかく、できごとの真相がわからないまま、(もちろん読者にもわかっていないんですが)それぞれの説を読んでいると、そのどれもが「それだ!」なんて思えるのでした(笑)。
ところで、この小説は実際の映画のタイトルや小説のタイトル、実際の事件事故なんかも出てきます。「エデンの東という映画が話題で、ジェームス・ディーンという俳優が」とか「もしかしたら「黒死館」みたいな時計塔があったりして」とか。久生(ひさお)という名の「探偵気取り」の女性が出てきますが、そうです、「ひさお」なのに女でしたか、と、ちょっと混乱するのでしたが。なんたって登場する場所は「ゲイバア」だし。とにかくその女性がすんごく活動的で元気いっぱい、いつも腕まくりしてるような(笑)イメージで、この彼女のおかげでどんよりとまがまがしく沈みがちな物語をからっとさせているのかも。いや、からっとさせる必要があるのかどうかはほんとはわからないんですが(笑)、なんだか活気あふれる不思議な小説です(笑)。下巻がいったいどういうことになっているのかまったく予測がつきませんが(笑)、まずは大事に読み進めていくとします。