「ケンカなんか腹が減るだけです」

水木しげるが亡くなってしまいましたね。「巨星墜つ」の言い回しは、ほんとにもう取り返しがつかない感が溢れすぎてて好きではないんですが、やはり頭をよぎります。惜しい人が私たちの住む世界からいなくなってしまいました。残念です。
ゲゲゲの鬼太郎」を初めてテレビで見たのはいつだったのかはっきりしませんが、そうとう古い記憶です。たしか「のっぺらぼう」の回だったような。私が子供の頃の鬼太郎の絵は、非常に怖かったんです(笑)。鬼太郎は、何度かリメイクされて放送されていますが、回を追うごとにかわいらしさが出てきています。行きつけの美容師さんは「ねこ娘のスタイルが良くなっている」といつか語っていました。美容室で妖怪の話し・・・(笑)、まあ、いいでしょう。とにかく、昔の鬼太郎は現代のと違って怖かったです。なんていうのかな、点描画のような細かいタッチで陰影をつけていました。私が記憶しているそののっぺらぼうなども、震え上がるほど怖かったです。子供向けなのに怖すぎ(笑)。でも、その熱意っていうか、徹底した気概のようなものは、子供心にも響いていたんではなかろうかとも思います。何十年経った今でもこうしてそのときの戦慄を覚えてるくらいだし(笑)。
さて、だいぶ前の映画ですが、「妖怪大戦争」というのがありました。妖怪は好きだし、清志郎も出てるし(笑)というので、映画館に行ったほかにDVDの初回限定エディションなどを手元に置いております。荒俣宏宮部みゆき、京極センセ、いや(笑)、京極夏彦、そして水木しげるという、そうそうたるメンバーによって作られた映画でした。こどもっぽいところと大人っぽいところ、こっちの世界とあっちの世界がごちゃごちゃに描かれてて、不気味でばかばかしくて、でもなんだかほろりとするような、いいように翻弄させられるなんとも味のある作品なのでした。水木しげるは、妖怪大翁として最後の方に出てきます。荒俣宏京極夏彦を従者に従えて。映画は、妖怪対魔人・加藤保憲との決戦がヤマ場となるわけですが、妖怪サイドの勝利でその決着がついたときに大翁が言うせりふが「ケンカなんか腹が減るだけです」でした。大戦争だったのに、勝ったのに、と、それなのに、淡々とした超越した様子が強い印象を残すセリフでした。
ところで、今日の朝日新聞水木しげるの記事に、長くアシスタントをしていたというつげ義春のコメントも載っていました。水木しげると数年前に会った時の会話、「つまらんでしょ?」といきなり水木しげるに話しかけられ、「つまらんです」「やっぱり!」。だそうです。このままつげ義春のマンガにありそうな場面ではないですか・・・なんて思いました。