雪渡り

雪渡り (日本の童話名作選)

雪渡り (日本の童話名作選)

観察会の記事で、雪わたりのことを書きました。で、雪わたりといえば、宮沢賢治です。
宮沢賢治といえば、なんといっても「注文の多い料理店」や「銀河鉄道の夜」「風の又三郎」あたりが有名ですが、その他の童話もほんとにしみじみとしたいいお話がいっぱいありますね・・・。この「雪渡り」は、上に書いた童話ほどはもしかしてメジャーではないのかもしれませんが、かわいらしい素敵な童話です。
「しろう」と「かんこ」という幼いきょうだいが、森で狐の子のこんざぶろう(だったかな・・・?1度読んだきりで記憶があいまいですが)に会います。そして、狐が催す幻灯会に招待されます。幻灯会なので夜だし、場所は森なんですが、そのきょうだいはおみやげを持って出かけていくんですよ。夜で心細いんですが、しろうもかんこも夜道をせっせと歩いて行きます。その野原の夜道が、すっかり堅い雪になってて、少しも沈まずに二人は歩いて行くんです。その様子が「雪わたり」なんですよね。
お話しのメインは、狐の幻灯会にまつわることです。なんでもかんでも狐に化かされたと、自分の落ち度まで狐のせいにしている村人たちのことを幻灯で映し出し、われわれ狐はそんなに悪いことをしていないし、こんなふうにやたらに酒に酔ったりしてはならない、なんていう教訓つきの幻灯会です。そういう幻灯を見た後、狐はしろうとかんこにおはぎを差し出すんです。狐に渡されたおはぎといえば、定番は馬糞ですよね〜、ってことで、正直、しろうとかんこは躊躇します。そのふたりの様子を幻灯会に集まってきていた老若男女の狐たちが見つめるわけですよ。「食うかな・・・?」ですよね。結局ふたりは狐を信じて食べることにして、勇気を持って食べたらおいしかった、と。そのことを狐たちはとても喜び感激します。「少しも酔っていない賢い人間の子供さんが、われわれの用意したものを食べてくださった」と偉い狐が話すシーンは感動的です。狐と人間(村人、かな?)との新たな良い関係が芽生える手ごたえを感じて読み終えることができます。
狐を信じて、雪の凍った夜道を月に照らされて先を急ぐおさないきょうだいの様子が、幻灯会の様子以上に目にありあり浮かんできます。やっぱりこの童話のタイトルは「雪渡り」なんですよね・・・。