「おにたのぼうし」

おにたのぼうし (おはなし名作絵本 2)

おにたのぼうし (おはなし名作絵本 2)

節分が近いので豆まきの絵本を、と思いまして。
おにた、っていう名前の子供の鬼がいます。おにたは、ある家の天井の梁のところからその家に住む親子の様子を見てるわけです。その家では、お母さんと幼い女の子の2人暮らしで、どうやら大変貧しそうです。悪いことにお母さんは病気で。女の子はけなげに一生懸命看病してるんですが、お母さんの病気が寝てれば治るようなふつうの風邪とかね、そういうのならいいけど・・・とほんとに心配になってくるんですが・・・。なぜかというと、家には食べるものもなくなって、女の子はそれでもお母さんに心配をかけてはいけないから、ごはんを食べたとうそをついたりするんです。家の食べ物が底をつくって、それほど長くお母さんは臥せっているのかな・・・?とそりゃこちらも心配になりますよ。こちらって、私ね(笑)。この絵本を知ったのは、私はすっかり大人になってからだったので、この家の重い経済状態とかが現実的ですごく心配になったのかもしれませんが・・・。
さて、そういうヘヴィな様子をおにたは観察してて、「あのちび、おなかペコペコのくせに強がって」と、「ちび」と一応悪態つきながらも、その女の子のけなげな様子にすっかり心打たれるんです。そして、さすが鬼(っていうと変ですが)なだけあって、魔法の術でご飯を出してあげてその子に食べさせる、と。女の子はとても喜んで「節分だから豆をまいて鬼を退治したいな。そうすればおかあさんもきっと良くなるはず」と、自分といっしょにいる男の子がまさか鬼とは思わずに(そりゃそうですよ)しみじみ語ります。
それを聞いたおにたは、所詮、鬼は悪者か・・・と傷心、傷心のうちに、女の子が目を離したすきに自ら節分の豆になります。女の子は、少年がいなくなったし、豆があるしで、ちょっと不思議がりながらも、神様がくださったんだわ、と、鬼がいなくなるように祈りを込めて豆まきをします。病気のお母さんを気遣って、小さな声で静かな豆まきです、って終わります。いや、なかなかやるせないお話しです。
表紙の絵は、角をかくすために、女の子の前に出て行くときにおにたが帽子をかぶったところ、ですね。おにたが豆になった時、女の子が「アラ、あのこ帽子を忘れたわ」と帽子を手に取ったらそこに豆があった、というわけなんです。
おにたが身を挺して豆になって、その豆で豆まきしたらお母さんもきっと良くなるよね、と思って読み終わることができるのがせめてもの救いかと。