あしたは桜桃忌

きりぎりす (新潮文庫)

きりぎりす (新潮文庫)

というわけで、太宰治です。
特に熱心な読者ではありませんが、太宰治は気になる人です。
その作品に触れるとなんだかそわそわと落ち着かないような気持ちにさせられてしまいます。
人間なら誰しもそういうところはあると思うんだけど・・・という、どうしようもないきまりの悪さや気まずさを、読み手に臆面もなくどんどん提示してくるというか、普段はそういうところ、わかってても見ないようにしてやっていってるよね、という部分をやすやすと見せつけてくるとでも言うのかな〜、そこにこちらはどぎまぎするのかも・・・。

この文庫のタイトルにもなっている「きりぎりす」という短編は、女性の言葉で語られてて、いきなり「おわかれ致します」で始まります。
成功を収めていく夫を「世俗にまみれた卑しい人」と斬り捨て、それまでの夫の発言や振る舞いを事細かにほじくり返して「恥ずかしいこと」となじり、夫がラジオ出演し「私の、こんにち在るは」なんてつい語ったのを聞いた時には『一体何になったお積りなのでしょう。恥じてください。』となるわけです。
小説なのに、なんだかこう・・・見てはいけないものを見てしまったような、きまり悪さを感じてしまうんですよね〜。
こんな小説書くんだから困った人ですね〜。
モテるわけだよ・・・(しみじみ)