ハート型の思い出

寺山修司少女詩集 (角川文庫)

寺山修司少女詩集 (角川文庫)

寺山修司については何度か記事を書いてますが、私は彼のファンです。実験的な創作をいろいろ試みた人だと思いますが、詩作でもそれがうかがえます・・・ということで、「ハート型の思い出」。この詩は、文字がハートの形に並んでいます。縦書きの詩です。それぞれの行の書き出しの位置を上げ下げすることで、文字の配列によって「絵」ができてるわけです。
ハートモチーフのペアのペンダントとかで、右片、左片と分かれたのがあったりします。真ん中で合うようになっててくっつけるとハート型になる、っていう。この詩はたとえて言うとそんな感じです。右片の詩を縦書きなので右から読んで、真ん中まで行ったら今度は左片の詩を左端から読むわけです。右片と左片の詩を合わせた形がハート型なんですよ。詩の内容はというと、アオくてそっけないほどに純情な様子です。でもなんたってハート型なもんだから、もうその世界は特別なアオいなりのきらめきを放ってる感じですよ。
「階段」ていう詩もあります。一段(行)ずつ文字が1つずつ増えていくことで、詩が階段の形を作っています。この階段は13段目で終わっています。一段、二段あたりは何気なくかわいらしく始まる詩ですが、最後が十三階段というね〜・・・。階段の形の、言ってみれば遊び要素の入った詩にもかかわらず、十三段目で終わってるその詩の、後ろの余白がなんともいえない気分にさせられます。
全体的にはかわいらしい詩集ということでいいのかもしれませんが、ひっそりと「毒」の要素があります。ロマンチックな中に見え隠れするこの「毒」が、今もその成分を衰えさせることなくイキイキしてるから(笑)寺山修司の作品群はいつもイキイキしてるのかな・・・なんて思います。毒のおかげ、ってのもなんですが・・・(笑)。